「ドラクエあるよードラクエ」
新橋のガード下で出会ったオヤジは僕をシャッターが半開きの怪しげな店へ案内した。「中には入るな。」「予約特価7,980円ね」僕から万札を引ったくるようにして取っていき店の奥へと入っていったオヤジ。もちろん予約なんぞしていないのだが。数分間……どうみても日本語ではない文字で書かれた看板を眺めているとオヤジが置くからジュエルケースを持って出てきた。
「ドラクエあるよードラクエ」
くしゃくしゃな千円札と一緒に渡されたディスク、ケースを開けるとコピー用紙が出てきた。これが説明書だな。でも裏表2ページしかない。しかもジャケットの右隅には「ダミー」と書いてある。数々の疑問をオヤジにぶつける間もなくオヤジはどこかへ消えていて怪しい店のシャッターはしっかり閉ざされていた。
僕はしぶしぶディスクを鞄の中にしまい、帰路へと向かった。
千歳烏山の自宅へ着き、早速ディスクをプレステ2へ入れて起動してみる。……動かない。どうやら規格外のディスクらしい。もう一度読み込ませてみるが、駄目。本体から取り出し、ディスクを念入りに見ていると鳥山アキラ風のイラストなどはどこにもないそれに、見慣れない英語表記されたロゴがあることに気づいた。
「まさかATARI社のジャガーCDとは……」
僕は数年ぶりに押入からジャガーを取り出すことにした。
つづく
