ツイッター創業物語(Hatching Twitter)読んだ

Hatching Twitter*1

総評としては「IT長者もめごと列伝」といった感じのノンフィクション本で、ソーシャルネットワークFacebook Effectなんかで刺激が足りなかった人でも満足できるようなスリリングぶりで文章がうまいのか、そんなひどい目にあったら発作的に自殺してしまうんじゃないのかと大分心配になっていた。が、なんかオチ的にはあとから振り返ると会社のそれぞれのフェーズでノアが始動し、ジャックが創造し、エブが拡大して、ディックが軌道に乗せたカタチでありなんやかんやでこいつらソーシャルとスタートアップでメイクマネーでそれぞれの幸福をみつけたらしいのでよかったよかった〜FIN〜。みたいな強引な美談っぽくしめくくられた。

が、サラっと書かれたいたけど競合のつぶやきサービスが出てくるのを封じるためにサードパーティのアプリの締め付けごと強化したっていうのが=いい仕事をした、という風に書いてあって。それは賛成しかねた。

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これ当初は社会運動などで激化していたサイバー攻撃とか便乗したスパムBOTへの防御的な施策かもしれないなーと好意的に解釈していたけど、実際は普通にTwitter自身のビジネス的な問題だったというふうに書いてあり残念な感じだ。

でもウェブ・テック業界とかプログラマー、この日記読んでいる人は間違いなくたのしめるのではないでしょうか。レンタルビデオショップで働いていたことがあったので、あの時よくみかけていた光景で肉体労働者のおっさんたちがヤクザ映画とかVシネマとかを入荷される度にチェックして楽しんでる感覚がようやくわかった気がした。

あのクジラでまくってた時期とかフォロー勝手に外れたり0になったりDM見れたりポスト消えたりした時代にTwitter内部ではこんな感じになっていたのかーというのが知れてよかった。例えば大統領選前ぐらいの時期にサイトの全データのバックアップ一切取ってなかったのが発覚した、とか。

@やハッシュタグはデザイナーの人が広めた

本書では@やハッシュタグはデザイナーの人が広めたということが書いてあった。のがへープログラマじゃなくてデザイナーなのかーと記憶に残った。

要監訳者

全体的に原著の表現からそうなのか翻訳時点でそうなったのかソフトウェア開発のさわり程度しか知らない状態でも違和感ある文章があった。@screen_nameとかカナに翻訳していたけど、これは翻訳時のミスだと思う。出版前にプログラミングの知識がある人がザッと訂正できてた方がよいと感じた。

が、スタートアップのチームの比喩で「楽団(バンド)」と訳しているのは筋がよかった。「バンド」だと日本人には「当方ボーカル」的なロックバンドをイメージしてしまう。

ジャック・ドーシーのド痛エピソード

またジャック・ドーシーのド痛エピソード(ジョブズ二世になりきるやら、取材で吹聴しまくるやらの)がすごくて正直、エヴァン・ウィリアムズと混同してたり同一人物だと思い込んでたりしていたが彼の見方はかなり変った。

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かなりエゴイスティックで自己愛の強い人物として描かれているので、Squareもこういう事態に陥っていてもおかしくない印象を受けた。

ギャグパート

なぜかギャグパートのエピソードも挟み込んであり、スヌープ・ドッグが突然Twitterオフィスにやってきて相手したエンジニアがツイート分析ツールを説明していたら「マリファナ」という言葉をつぶやくとフォロワーが増える現象にスヌープ・ドッグが異常に食い付いてきた、とかオフィス内で社員も一緒にマリファナ煙草ふかして踊り狂ってたら書面で怒られたという話が載っていた。

お気に入りは、ロシアの大統領がオフィスに来て目の前でツイートするというイベントの最中、サイトがダウンしてしまったので復旧までの時間稼ぎの為に牛歩戦術でジグザグに歩いたり、用のない電動付きバイクを見せたりしていたというエピソード。

ツイッター創業物語 金と権力、友情、そして裏切り

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後日談

この本でカバーできていない後のストーリーとしてはエブがMediumを。ビズはJellyというサービスを立ち上げている。

*1:TVドラマ化するらしい